発注書兼ブリーフシート(はっちゅうしょけんぶりーふしーと)
別名:ブリーフシート、BS、発注書
案件の起点で、何を誰に向けてどう作るかを確定させるための文書。制作前ブリーフの実装物。
発注される方へ — この言葉が意味すること
案件を始めるときに、着手前に決めておかないと後工程で大きな手戻りになる項目をまとめて確定させる文書です。
確定させる項目は次のとおりです。
対象資材 — 製品情報概要なのか、広告なのか、説明会用のスライドなのか、患者向けなのか。資材の種類によって従うべき規制が変わります。
対象者 — 医師、薬剤師、患者、一般の方、社内のどれに向けるのか。書ける内容と表現が変わります。
承認範囲 — 効能効果、用法用量、そして「しばり表現」が何かを明示します。ここが曖昧なまま進むと、完成間際に根本的な書き直しが発生します。
根拠資料 — 使用可能な資料は何か。CTD、論文、審査報告書、電子添文のどれが使えるのか。
審査ルート — 薬事、メディカル、安全性、法務、コンプライアンスのうち誰が確認者なのか。
媒体仕様 — 紙、PowerPoint、Web、動画、タブレット、SNSのどれか。媒体ごとに規定が異なります。
この6項目が埋まっていない状態で制作を始めると、ほぼ確実に手戻りが起きます。逆に言えば、ここを埋めるために社内で議論する時間は、あとで取り返せる投資です。
制作する方へ — 実務上のポイント
ブリーフシートを受け取ったら、空欄になっている項目を放置しないことが要点です。特に「承認範囲」と「根拠資料」が空欄のまま着手すると、初稿を出したあとで内容を作り直すことになります。
改訂案件では、改訂用のブリーフシートを新たに起こします。前回のものを流用すると、前回から変わった条件(対象者の変更、媒体の追加、根拠資料の更新)が反映されません。
デザインの指示は、ブリーフシートとは別のPowerPointで支給されるのが一般的です。ブリーフシートは案件の枠組み、指示書は中身の作り方、という分担になります。片方だけで着手しないでください。
なお、ブリーフシートには記入者・編集担当・確認者の氏名が記載されていることがあります。これは個人情報にあたるため、社内のナレッジや事例集に転記する際は氏名を除きます。
転載許諾の欄も見落とされやすい項目です。他誌に掲載された図表を使う場合、許諾の取得には時間がかかります。ブリーフシートの段階で許諾が必要かどうかを確認しておかないと、制作の終盤で図を差し替える事態になります。
実例
新規制作の案件では、ブリーフシートに加えて案件の開始を記録するシートが起こされ、新規か改訂か、対象は誰か、判型は何か、納品形式は何か、転載許諾の要否、キックオフ会議の有無までが1枚に記載されます。
改訂案件では、前回のブリーフシートを流用せず「改訂版」として新たに起こすのが実務の標準です。改訂では対象読者が広がっていたり、媒体が紙からタブレットに変わっていたり、使える根拠資料が更新されていたりします。前回のものを流用すると、これらの変更が反映されないまま制作が進みます。
混同されやすい言葉
指示書は、デザインやレイアウトをどう作るかを伝えるもので、案件の進行中に何度も発生します。ブリーフシートは案件の起点に1回作られ、案件全体の枠を決めます。
見積書は費用と納期の合意文書です。ブリーフシートは制作内容を決めるもので、目的が異なります。ただし判型・ページ数・納品形式はブリーフシートで決まるため、ここが固まらないと見積りも出せません。
企画書は、何を作るべきかを提案する文書です。ブリーフシートは作ることが決まったあとに、その条件を確定させるために作られます。