改訂連鎖(かいていれんさ)
別名:改訂の連鎖、版の連鎖
一つの資材が版を重ねて改訂され続け、赤字と修正が何段階も往復していく流れのこと。
発注される方へ — この言葉が意味すること
医薬品の資材は、一度作って終わりになりません。承認前に作り始めた資材が、承認取得・薬価収載・電子添文の改訂といった出来事のたびに更新され、数年かけて版を重ねていきます。この一連の流れを改訂連鎖と呼びます。
実際の例で言えば、A4・1ページの簡単な資材が、起案から2年半のあいだに第1版から第4版まで改訂され、そのあいだに承認番号・副作用の発現頻度・用法の記載・版表示が何度も書き換わる、ということが普通に起きます。
発注側として意識しておきたいのは、改訂のたびに「何がどう変わったか」を制作側が正確に把握できる状態を保つことです。前の版のデータが手元にない、どの版が最新か分からない、という状態になると、改訂は新規制作と同じだけの手間とコストがかかります。
もう一点、改訂時には資材管理番号が更新され、別の資材として扱われるのが一般的です。番号の体系は企業ごとに異なりますが、いずれも改訂で番号が変わります。旧番号の資材が市中に残っている状態をどう扱うかは、改訂のたびに判断が必要になる論点です。
制作する方へ — 実務上のポイント
改訂案件に入るとき、最初にやることは改訂のトリガーが何かを見極めることです。改訂の理由はおおむね次のどれかに分類できます。
一つ目は承認ステータスの反映です。承認前に仮置きしていた承認番号が確定する、薬価基準収載年月と販売開始年月が入る、版表示が「作成」から「改訂」に変わる、といった変更がまとまって発生します。
二つ目は電子添文の改訂への追随です。副作用の発現頻度が更新される、別々に書かれていた事象が統合される、頻度の区分が変わる、項番号が整備される。ここは必ず最新の電子添文と直接照合します。前の版の記載を正しいものとして扱ってはいけません。
三つ目は表記統一・体裁の整理です。販売名への®の付与、一般名と販売名の使い分けの揺れの解消、用法表現の統一などが該当します。
四つ目は仮置き情報の差し替え、五つ目は改訂箇所マーカーの更新です。
進行管理の面では、段階間の差分を「収束の指標」として読む前に、判型が同じかを必ず確認します。同じ資材の改訂連鎖の中に、見開き版と単ページ版が混在することがあります。判型が変わった段では版面のページ番号が対応しないため、「指摘が25件減った」という数字が、改訂が進んだ結果ではなく単に判型が違うだけ、ということが起こります。実測した例では、10段階の改訂のうち4箇所が判型の継ぎ目でした。
実例
ある資材の版遷移では、副作用の一つである注入に伴う反応の発現頻度が、7.7%→6.5%→4.8%と版を追って変化しました。これは資材の誤りが直されたのではなく、データソースが少数例の海外データから国際共同試験の最終集計へ移ったことによる更新です。
同じ連鎖の中で、併記されていた事象が上位の事象に統合され、含まれる事象の列挙内容も版ごとに変わりました。前の版の記載をそのまま流用すると、この種の変更を丸ごと見落とします。
混同されやすい言葉
版管理は、どの版が最新かを混同しないように記録・保管する仕組みのことです。改訂連鎖は、版が重なっていく現象そのものを指します。
増刷は内容を変えずに刷り直すことで、改訂ではありません。資材管理番号も更新されないのが通例です。
版ちがい展開は、同じ資材が時間軸で更新されていく改訂連鎖とは向きが違います。既存資材の骨格を流用して、別の適応や別の対象読者に向けた資材を新たに起こすことを指します。作業としては似ていますが、改訂は前の版を置き換え、版ちがい展開は前の資材と並存します。