Facts & Truth合同会社

指示書(しじしょ)

別名:デザイン指示書、DS

資材をどう作るか、どう見せるかを制作側に伝えるための文書。赤字と対で運用される。

発注される方へ — この言葉が意味すること

指示書は、赤字とは役割が違います。ごく単純に言えば、赤字は「何を変えるか」、指示書は「どう見せるか」を伝えるものです。

この分担は実務上かなりはっきりしています。「この段落を削除」「この数値を修正」は赤字で足ります。一方で「表紙をもっと信頼感のある雰囲気に」「この見開きは図を主役にして文章は減らしたい」といった、面の作り方そのものに関わる指示は、文章で書いても伝わりません。参考になるビジュアルを貼る、現状のレイアウトに×印を付けて修正イメージを並べる、といった見せ方が必要になります。そのためにPowerPointが使われることが多く、「指示書pptx」と呼ばれます。

発注側として押さえておきたいのは、指示書と赤字は片方だけでは指示が完結しないということです。実際の案件では、赤字PDFの中に「別途PPTで修正方針を記載しております」といった相互参照が現れます。逆に、指示書に書いた差し替え文言が、そのまま赤字PDFにも現れます。両方を同じタイミングで揃えて渡すことで、制作側が指示を取り違えるリスクが下がります。

もう一点。指示書に「変更してよい範囲」と「触ってはいけない範囲」を明示しておくと、認識のずれが大きく減ります。ブランドのロゴ周り、承認された効能効果の記載、安全性情報の章立てなどは、デザイン上の都合で動かしてよい要素ではありません。赤枠で「変更不可」と示す運用が定着しています。

制作する方へ — 実務上のポイント

指示書を受け取ったときにまず確認するのは、その指示書が何型かです。実務で現れる指示書は、おおよそ次の型に分かれます。

依頼文だけの文章型、版面に流し込む文言そのものが書かれた差し替え原稿型、現状と修正後を並べて処置を書いたbefore/after型、版面のパーツを画像で割り付けた構成案型、版面のスクリーンショットに×印を付けて処置を一行だけ書いた画像+一行型、参考ビジュアルだけを並べたムードボード型。

ここで実務上重要なのは、後ろの型ほどテキストとしてはほとんど情報がないという点です。実測すると、1スライドあたり40字未満のものが半数近くを占めます。極端な例では、表紙の方向性を伝える指示書が6スライド・画像42点・テキスト0字ということもあります。

この事実には運用上の意味があります。指示書を文字情報としてだけ処理すると、レイアウトとトンマナの判断が体系的に抜け落ちます。抜けるのは偶然ではなく、その種の判断こそが図で伝えられているからです。指示書は必ず画像として目を通します。ファイル名からは判断できません。同じ「修正イメージ」という名前でも、赤文字が9ブロック入っているものと1文字も入っていないものがあります。

着手前に、指示書の参考画像を1点ずつ読み解き、そこから読み取った意図を言語化してクライアントに提示し、合意を取る工程を挟むと、方向性の作り直しが激減します。「参考画像に似せる」ではなく「参考画像のどの要素を、なぜ採用するのか」まで踏み込むのがポイントです。

実例

改訂案件では、まず発注書兼ブリーフシートで案件の枠(判型・対象者・納品形式・使用可能な根拠資料)が決まり、デザインの中身は別途PowerPointの指示書で支給される、という二段構えが一般的です。

指示書に「表紙をベースに調整」「p4-5は見開きで」といった踏襲指示が入る場合、それは既存資材のレイアウト骨格をそのまま使い、差分だけを変える方針を意味します。ゼロから作り直す指示ではありません。

混同されやすい言葉

発注書兼ブリーフシートは案件全体の枠組み(何を、誰に向けて、どの形式で、いつまでに)を決める文書で、案件の起点に1回作られます。指示書はその中身をどう作るかを伝えるもので、案件の進行中に何度も発生します。

赤字は既にある版への修正指示です。指示書は、まだ形になっていないものの方向性を伝える場面でも使われます。