Facts & Truth合同会社

専門用語の表記ゆれ除外(せんもんようごのひょうきゆれじょがい)

別名:過検知の補正

薬物動態の記号など確立した専門用語は、一般語の言い分けチェックから除外するという扱い。

発注される方へ — この言葉が意味すること

表記統一のチェックは、機械的にかけると本来直すべきでないものまで拾ってしまうことがあります。その代表が、確立した専門用語や記号です。

たとえば `Cmax` は「最高血中濃度」を意味する薬物動態の用語で、`max` は「最高」にあたります。資材内の他の箇所で「最大」という語が使われているからといって、`Cmax` を「最大」に統一するのは誤りです。`Cmax` は用語であって、一般語の「最高/最大」の言い分けの対象ではありません。

同様に `Tmax` `AUC` `t1/2` `CL/F` `Vd/F` `MRT` といった記号・術語も、一般語の統一チェックからは除外します。

この区別が効くのは、チェックの精度が上がると、指摘の信頼性が上がるからです。直さなくてよいものが大量に指摘されると、受け取る側は指摘全体を精査しなくなります。結果として、本当に直すべき指摘が埋もれます。

レビューを依頼する際、「どこまでを指摘対象とするか」の擦り合わせをしておくと、この種の無駄が減ります。

制作する方へ — 実務上のポイント

除外の範囲には条件があります。同じ語が本文の文章中に出てきた場合は、対象に戻します。除外されるのは、用語・記号としての出現に限られます。

たとえば「最高血中濃度(Cmax)に達するまでの時間」という文章であれば、`Cmax` は記号としての出現なので除外しますが、「最高の効果」といった一般語としての「最高」は通常どおりチェックの対象です。

もう一つ、実務で重要なのが案件ごとの指示があればチェックを止めるという運用です。

数値と単位の間のアキ、%の前のアキ、統計記号の大小や書体は、メーカーや代理店ごとに独自のルールがあります。「数字と単位の間は半角アキ、ただし%はアキなし」「pは小文字で統一」といった指定が実際に存在します。表記ルールの優先順位では案件指定が最上位なので、指示がある資材ではこの系統のチェックを止めます。

指示が確認できない場合のみ指摘し、その際は「案件の表記指示があればそれに従ってください」と添えます。社内標準を根拠に断定的な指摘を出さないことが要点です。

逆に、対象を広げるべき領域もあります。図版の中の文字です。本文と図で用語が食い違う事故(本文「蓄積」、作用機序図「集積」など)は実際に起きるため、作用機序図やフロー図の中の文字も用語統一の対象に含めます。画像から文字を抽出できない場合は、「図中文字は未検証」と明記します。黙って対象外にすると、確認済みと誤解されます。

そして揺れを指摘するときは、どちらに寄せるかまで示します。病態のイメージに照らしてどちらの語が適切かを述べたうえで統一を提案するのが、実務的な指摘の形です。

実例

副作用名の表記でも、同じ判断が必要になります。電子添文に記載された副作用は全試験を統合した集計に基づきますが、資材の臨床成績の章に載る副作用は、その試験の集計に基づきます。試験の実施時期によっては、当時の用語集の版に沿った名称で記載されていることがあります。

この場合、両者の表記が違うことだけを根拠に修正を求めるのは誤りです。指摘するとすれば、用語集の版とデータのカットオフ日が注記されているか、という点になります。表記の一致ではなく、出典の明示が論点です。

混同されやすい言葉

表記統一は、資材内のゆれをなくす作業そのものです。ここで扱っているのは、その作業の適用範囲をどう絞るかという判断です。

原典表記は、何に統一するかの基準になります。専門用語の除外は、そもそも統一の対象にするかどうかの判断です。