Facts & Truth合同会社

原典表記(げんてんひょうき)

別名:公式表記、承認表記

承認文書・論文など元になった文書での表記。読みやすさのために変えてはいけない。

発注される方へ — この言葉が意味すること

原典表記とは、その情報の元になった公式文書での書き方です。電子添文、インタビューフォーム、審査報告書、論文の原典などがこれにあたります。

医薬品資材の制作で守るべき原則は単純で、原典表記を勝手に変えないということです。

これは形式的な決まりではありません。たとえば電子添文の「効能又は効果」という項目名を、資材で「効能・効果」と書き換えたとします。読みやすさは変わるかもしれませんが、承認された文言と資材の記載が一致しなくなります。医薬品資材では、この一致そのものが求められています。

同様に、「用法及び用量」を「用法・用量」に直すこともできません。副作用の名称、臨床試験の名称、略語も同様です。

発注側で起きやすいのは、社内の文書スタイルに合わせようとして原典表記を崩してしまうケースです。社内の文書規定では中点を使うことになっている、といった理由で修正指示が出ることがありますが、承認文書由来の記載についてはこの優先順位が逆転します。原典が上位です。

判断に迷ったときは、「この記載はどの文書から来ているか」を確認してください。公式文書由来であれば、その表記のままが正解です。

制作する方へ — 実務上のポイント

実務では、原典が何かを常に把握しておくことが要点になります。同じ資材の中でも、記載によって原典が違います。効能効果は電子添文、臨床成績の数値は論文または承認時評価資料、薬物動態のパラメータはインタビューフォーム、といった具合です。

校正で表記のゆれを見つけたときも、どちらに寄せるかは原典が決めます。資材内で多数派の表記が正しいとは限りません。

大文字・小文字の自動変換には特に注意が必要です。文書作成ソフトは、文頭の小文字を大文字に直したり、略語の綴りを「修正」したりします。`pH` が `PH` に、`mRNA` が `MRNA` になる事故はここから起きます。自動修正の結果を信用せず、原典と照合します。

表記の優先順位も押さえておきます。案件ごとのクライアント指定が最上位、次にブランドガイドライン、次に公式文書の表記、次に既存資材との整合、最後に制作会社の社内標準です。原典表記は上から3番目であり、案件指定やブランドガイドが原典と異なる書き方を指定している場合は、そちらが優先されます。

この優先順位を知らないと、「原典と違う」という指摘を出してしまい、クライアントから「うちのルールです」と差し戻されることになります。

実例

公式表記の不改変が問われる典型が、項目名です。「効能又は効果」「用法及び用量」は、読点や中点に置き換えることができません。「効能・効果」と書かれた資材を見つけたら、それが原典由来の記載かどうかを確認します。

臨床試験の名称も同様です。論文で使われている試験名の表記(大文字小文字、ハイフンの有無、数字の書き方)は、原典のまま使います。見出しのデザイン上の都合で大文字に揃える、といった処理も改変にあたります。

混同されやすい言葉

表記統一は、資材内のゆれをなくす作業です。何に統一するかを決めるのが原典表記です。

確定文言は、承認内容などに基づいて表現を変えずに使うことが決まっている文章です。原典表記は「書き方」、確定文言は「文章そのもの」を指します。

ブランドガイドラインは、製品の表記や見せ方についてメーカーが定めた基準です。優先順位では原典表記より上位に置かれるため、両者が食い違う場合はブランドガイドに従います。原典と違うという理由だけで指摘を出すと、差し戻されます。