赤字(あかじ)
別名:朱書き、赤入れ、修正赤字
資材の修正指示を、校正紙やPDF上に直接書き入れたもの。またはその修正指示そのもの。
発注される方へ — この言葉が意味すること
制作会社から「赤字をください」と言われたときに求められているのは、修正したい箇所と、修正後にどうなってほしいかが、資材のどの位置の話なのか特定できる形で書かれたものです。メール本文に「3ページ目の副作用の数字を直してください」と書くのとは、情報として別物として扱われます。
位置が特定できる形が求められるのには理由があります。医薬品資材は1ページに要素が密集していて、「副作用の数字」が本文・図の中・脚注・表の3〜4箇所に同時に存在することが珍しくありません。文章で場所を指定すると、どれを指しているのかが制作側で確定できず、確認のやり取りが1往復増えます。PDFに直接印を付ければ、この往復が消えます。
実務上は、受け取った資材のPDFにAcrobatなどの注釈機能で書き込み、そのまま返すのが最も確実です。手書きした紙をスキャンしたものでも構いません。重要なのは形式ではなく、対象と指示が1対1で結びついていることです。
もう一点、発注側で意識しておくと制作が速くなるのが、修正指示は一度にまとめて出すということです。赤字が届くたびに制作側はデータを開いて修正し、確認用のPDFを書き出して返します。この一巡りは、修正が1箇所でも20箇所でも同じだけ手間がかかります。社内の複数部署から意見が出る資材では、部署ごとに個別に赤字を送るより、取りまとめてから1回で渡したほうが、結果的に早く仕上がります。
制作する方へ — 実務上のポイント
赤字を受け取ったら、まずどの版に対する赤字なのかを確定させます。制作が進行している資材では、クライアントの手元にある版と制作側の最新版がずれていることがあります。すでに直した箇所に対する赤字が届いた場合、そのまま反映すると修正を巻き戻すことになります。
このずれを防ぐため、赤字ファイルの名前には対象となる版が分かる情報を入れて保存します。日付を末尾に付けた版名をそのまま含める形(`日付【修正依頼】資材名_対象版の日付` のような形式)が実務では定着しています。ファイル名だけで「いつ出した版への赤字か」が分かるため、あとから経緯を追うときに効きます。
反映作業では、赤字を1件ずつ消し込む方式を取ります。頭から順に直していくと、図の中の文字・脚注・目次といった目立たない箇所が抜けます。特に本文とグラフ内の文字は別のオブジェクトとして作られているため、本文だけ直してグラフを直し忘れる事故が起きやすい箇所です。
反映後は、修正前後のPDFを比較して差分を確認します。Acrobatの「ファイルを比較」で、テキストのみの比較を外して画像として比較すると、文字の変更だけでなくレイアウトのずれも検出できます。目視だけに頼ると、意図しない行送りの変化や画像のずれを見落とします。
赤字が電子メールの本文で届くことがあります。メールには送信者の個人情報が含まれるため、指示内容だけを別のファイルに転記して案件フォルダに残し、メール原本は共有フォルダに置かない運用にします。
実例
適正使用ガイドの改訂で、赤枠で囲んだ「削除」の文字から対象の段落へ引き出し線を引いた赤字が届く、というのが典型的な形です。ほかに「図を下記の図に修正」と差し替え後の図を並べたもの、「記載場所を変更(グラフの下)」と移動先を指示したもの、円グラフの数値に「(海外データ)」の注記追加を求めるものなどがあります。
ある資材では、10段階にわたって赤字と修正を往復し、累計で400件を超える指摘が入りました。改訂が続く資材では、赤字は一度きりのやり取りではなく、版を重ねる連鎖として発生します。
混同されやすい言葉
修正指示は、赤字を含むより広い言葉です。口頭での依頼やメール本文での指示も修正指示ですが、赤字とは呼びません。赤字は「資材の上に直接書かれている」ことが要件です。
コメントは、修正を求めるものとは限りません。「この表現で問題ないか確認したい」「この数値の出典を教えてほしい」といった質問も含みます。赤字として扱って機械的に反映すると、意図が変わることがあります。
申し送りは、今回は修正しないが次の版で検討したい事項を、次工程に引き継ぐためのメモです。今回の反映対象には含めません。